bookmark_border[14] 固定無線電話システム

これも80年代半ばのかなり古い話になってしまいますが、アフリカのスーダンに無線電話システムを導入するプロジェクトに参加する機会を得ました。日本からの無償援助です。

首都のハルツームからナイル川に沿って南に150Kmほど下ったところに、ワドメダニという小さな町があります。そのそばの「ゲジラ地区」という、昔イギリスが灌漑システムを構築し綿花の生産を推進した広大な土地に無線電話網を引くというプロジェクトです。

自動車電話と違い電話機自体は移動しませんので、通話を隣の無線基地局に渡す「ハンドオフ(ハンドオーバー)」や交換機同士の切替「ローミング」という仕組みが不要であり、それに端末側には八木などの指向性アンテナが使え、山やビルが無いためサービスエリア推定が容易なことからシステム設計は比較的楽です。

ちなみに、通常の電話回線であれば無線ではなく有線で良さそうですが、広大な土地に電話線を引くコスト、ケーブルの盗難、メンテナンス等を考慮して無線になったようです。ただし問題は電源です。

電話機を設置する場所は、普通の家や事務所などでなく農業小屋のような簡素で電気が来ていないところもあります。有線電話であれば端末側は電源は必要ありませんが、無線電話ではそうはいきません。

そこで、端末側のアンテナポールに小型のソーラーパネルを付けバッテリー駆動させることにしました。ソーラーパネルの周りには何本か針金を立て、鳥が寄ってこないようにしています。

すでに35年ほど経っており、今現地はどうなっているのか・・・知りたいような知りたくないような気持ちです。おそらく携帯電話システムが構築され、現地の方は普通にスマホを使っているのでしょう。

 

bookmark_border[13] アンテナタワー

中近東の某国でのことですが、自動車電話無線基地局の工事現場で、建設会社の人に誘われて地上高75メートルの自立鉄塔に登ったことがあります。

もちろん命綱を付けるのですが、ラダーを一段ずつ上がる際に手足計4本のうちいずれか3本で体を支える「3点支持」を徹底するよう言われました。

その鉄塔は下の方は幅が広くラダーが中央にある垂直タイプだったため、登り始めはラダーとタワー骨材との間に距離があり恐怖を感じました。しかし、上にいくにつれてタワーが細くなっていき、また途中に休憩場所もあるため安心感が増し徐々に慣れていきました。結局、てっぺん到達まで30分はかかったと思います。

自立鉄塔とは別に、ワイヤー張力で支えるガイタワーには登った経験はありません。会社の先輩の話ではガイタワーはよく揺れるとのことでした。風の影響だけでなく自分の体重でも揺れるそうです。

 

bookmark_border[12] 電界強度の測定

80年代前半、社会人になりたての頃の私の仕事は、海外向け自動車電話のシステム設計と、実際に出来上がったシステムでのカバレッジ(サービスエリア)の調査でした。

当時の自動車電話システムは、今の携帯電話システムのような無線基地局のアンテナをビルの屋上などにつけてカバレッジを細かく分ける方式ではなく、高い鉄塔の上に大きなアンテナを付けて電波を遠くまで飛ばしエリアを稼ぐ方式でした。そのため、いかに少ない基地局数やアンテナ数で広いエリアをカバーするかが課題であり、またシステム構築をしたのちサービスインの前にフリンジ(カバレッジの端っこ)や不感地帯の特定が必要となります。電波がどこまで届くか・・・というのは理論上計算が可能です。すなわち、アマチュア無線の試験にも出てきますが電界強度は距離に反比例するということです。しかしそれは送信側と受信側の間に何も障害物が存在しない「自由空間」上の話であり、実際はビルが立ち並ぶ都会などは伝搬状況が大きく異なります。

そこで参考にすべきバイブルが「奥村カーブ」です。奥村氏は、60年代から70年代にかけて東京タワーや筑波山に送信アンテナを設置して関東平野をクルマで走行し受信レベル(電界強度)の測定を行ったそうです。そして距離と受信電界強度の関係をグラフにした「奥村カーブ」を完成させました。奥村カーブを元に、送信電力、アンテナ利得、アンテナ高、受信感度(最低受信電界強度)などのパラメータを考慮し実態に即したカバレッジを推定するのですが、海外など広大な土地に無線基地局を設置する際は補正が必要でした。

実際にシステムが組み上がったあと、現地でバンを借りてエリア内を走行し電界強度測定機で測定する作業に参加しましたが、当時はGPSなどは使うことができず、紙の地図上に電界値を手書きでプロットしていく作業が延々と続きました。大変ではありましたが良い思い出として残っています。

 

bookmark_border[11] トリオ TS-120V

社会人になってしばらくモービルQSO(のワッチ)を楽しんだ後、固定HFに出てみたいとの衝動に駆られトリオのTS-120Vを買いました。これはHF入門機ではありますがツマミやボタンがたくさん付いていて「通信機」っぽく、本体側のマイクコネクタがオス4ピンであることも購入の決め手になりました。人それぞれこだわりのツボは違うと思いますが、トリオの商品戦略が上手かったのでしょう。

リグ購入後、アンテナをどうするかで行き詰ってしまいました。集合住宅のため外にアンテナが付けられないのです。またケーブルの引き込みもできません。結局、このリグでは一度もCQを出さず、簡単な線をつないだだけのSWL/BCL機に徹してしまいました。

アマチュア無線はアンテナが一番大事という基本的なことが、その時は頭からすっかり抜け落ちていました。モービルにせよ固定にせよQSOを楽しむことができなくなり、それを以ってアマチュア無線からは完全に遠ざかってしまいました。

bookmark_border[10] トランクリッドアンテナ

学生時代は親のクルマを乗り回していましたが、社会人になってローンを組んで自分でクルマを持つことができ、モービルハムを始めてみたいと思うようになりました。

リグは手持ちの福山 Multi 700S、アンテナが無かったので調達することに。当時は自動車電話の需要が伸びている時期で、根元にスプリングがついた黒いトランクリッドタイプのアンテナがステータスでした。中には自動車電話サービスを受けず、ダミーアンテナだけ付けたクルマも多かったようです。

2mバンド用アンテナとして同じような形のアンテナが販売されていましたので、半分見栄も手伝ってそれを取り付けることにしました。クルマはマニュアル車のため、アドニスのマイクを付けてハンズフリーで運用できるようにしました。

初めはワッチに徹しその後QSOを試みたものの、運転しながら相手のコールサインを聞いて覚えるというのが想像以上に大変なことであることを実感することとなり、ほぼワッチ状態となってしまいました。