[741] リグ増設時の届出と運用開始可能日

技適証明を受けたリグを増設する場合、既に免許を受けている周波数、電波の型式、空中線電力などに変更が無ければ「申請」は不要で「届出」で足りるのですが、総務省の電子申請システムで送信機増設の「届出」を行った場合、いつの時点からそのリグを使って電波を出すことができるのか、先般FTX-1F/FTX-1Mの手続きを行ったのを機に、改めて整理してみました。

総務省の関連サイトには以下のように記載されています。

「法令に定められた形式上の要件に適合している『届出』が総合通信局等に到達する前に、新たに購入した適合表示無線設備などを運用することはできません。」

逆に、形式上の要件に適合していない「届出」が総通等に到達しても運用できないと読めます。そもそもそれは「届出」とはみなされないのでしょうね。実際に届出をしても補正を要請される場合がありますので、形式上の要件に適合した形で届出を補正しなければ「届出」は完了していないことになります。

紛らわしいのは、電子申請(届出)をした後すぐにシステム側から「システムに到達致しましたのでお知らせします。」とのメールが届くことで、これはエラーなくシステムに届いたことを自動送信メールで知らせてくれるだけで、その時点ではまだ形式審査は始まっていないと思われ、注意が必要です。

行政手続法第37条にも「届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。」と規定されており、システムに到達した段階では届出とはならないということなのでしょう。

結果的に補正の要請が無かった場合は、届出到達と同時に電波を出せるのでしょうが、やはり審査終了のステータスになるまで待った方が安全かと思います。

当局の場合、下に示すようにFTX-1F/FTX-1Mの増設のための変更届出を7月15日に行い、審査完了が7月18日でわずか3日間待つだけで済みましたので、少なくとも関東では以前に比べてリードタイムはかなり短縮されたと感じています。

ところで以下は余談ですが、冒頭の総務省ガイドに記載されている「新たに購入した適合表示無線設備の追加など、総務省令で定める軽微な事項に該当する無線設備の変更の工事をする場合は、遅滞なくその旨を総務大臣に届け出なければならず」は、電波法第9条第2項の規定が根拠となっています。

電波法第9条

2.前項ただし書の総務省令で定める軽微な事項について工事設計を変更したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。

ここで総務省のガイドが「無線設備の変更の工事をする場合は、遅滞なく~」と変更工事(リグ増設)前の届出が前提になっているのに対して、電波法の条文は「工事設計を変更したときは、遅滞なく~」と過去形になっているのが気になります。

どちらも「遅滞なく」と続いており起点が必要で過去形が正しいものと思われますが、アマチュア無線の場合は、増設の意思を固めたときや実際にリグを購入したときなどが起点になるのかも知れません。

ちなみに「遅滞なく」は、ASAP(できるだけ早く)を表す法律用語で、合理的理由があれば遅れが許されます。それに対して「直ちに」は一切の遅延が許されず、また「速やかに」は、「直ちに」と「遅滞なく」の中間的な意味として使われます。

契約書においてもこれらの文言は良く使われていて、先方からのドラフトで当方の義務として「直ちに~する。」と規定されているのを「遅滞なく~する。」と修正するケースが多々あります。ただ契約書の場合は、極力疑義が生じないように「●日以内に~する。」と期限を明確に規定した方が良いのは言うまでもありません。

 

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