bookmark_border[145] HF通信におけるノイズ低減

アマチュア無線に関する話題ではないのですが、40年前に大学の卒論のために船舶HF通信のノイズ低減について研究したときのことをふと思い出しました。

当時はもちろんアナログ通信で、船舶ですから過酷な自然環境にさらされて通信品質に影響を及ぼします。特にAMやSSBなどの振幅変調方式の通信では、熱帯性驟雨(スコール)などの強い雨により信号の振幅が変動して通話の明瞭度が悪化するため、それをいかに改善するかがテーマでした。

通常のゆっくりしたフェージングとは異なり、スコールによる振幅変動は、振れ幅は小さいものの周期が短くてランダムでホワイトノイズに近いため、それをAFレベルでいかに低減するかというのが課題でした。ホワイトノイズは周波数全体に満遍なく広がるため、音声帯域以外を遮断するようなフィルタでは防ぐことができません。

一方、ホワイトノイズは時間的にランダムですので、自己相関すなわち時間「Δt」離れたノイズとの相関はゼロになり、逆にΔtがゼロの場合は相関は限りなく大きくなります。実際は純粋なホワイトノイズではないので、そのようなインパルス状にはならないのですが、ノイズ信号の周波数軸を時間軸に変換すると、時間「0」近辺に多くのエネルギ―が集中するのがわかります。

この特徴を利用して、AF信号をA/D変換し、それをFFTに掛けて時間軸に変換、時間「0」近辺のデータを取り除き、逆FFTに掛け周波数軸に戻し、最後にD/A変換してアナログ信号に戻すという作業を、ミニコンを使ってソフトウェアでシミュレーションしていました。なお、ノイズが乗ったAF信号を一定の時間枠で切り取って上記の処理をし、その結果をつなぎ合わせるというプロセスも必要でした。

その結果どうだったか・・・は、残念ながらあまり記憶がありません。ただほんの入り口ではありますが、実験を通じて信号処理理論に触れることができたのは良かったと思っています。今や、DSPさらにはPCアプリを使ったリアルタイムでのフィルタリングが当たり前ですので、それがブラックボックス化してしまい、基礎理論をシミュレートする機会が少なくなったことを考えると貴重な経験でした。