bookmark_border[15] インピーダンスマッチング

短い期間ですが、仕事で受信機の設計をしたことがあります。アンテナ内蔵型のシングルスーパーヘテロダイン受信機です。そこでは「回路間のマッチングをしっかりとること」が無線機設計の肝であることを学びました。

アンテナから始まり、RFアンプ、RFフィルタ、ミキサ、局発、IFフィルタ、IFアンプ、復調器など、それぞれの回路の出力インピーダンスと次につながる回路の入力インピーダンスを合わせるのですが、ネットワークアナライザで各回路間の入出力インピーダンスを測定し、その実数部(レジスタンス)+虚数部(リアクタンス)をスミスチャートにプロットして、インピーダンスが一致するように次回路側のL、Cなどの定数を変えていきます。

しかしながら思ったとおりにはうまくいきません。定数は、部品自体が持つ「集中定数」だけでなく、プリント配線板が持つ「分布定数」が影響しますので、場合によってはプリントパターンを切ったり配線経路を変える必要があり、当時はシミュレータ自体も十分に完備されていなかったためカットアンドトライが続きます。

また、手作りの試作機でチャンピオンセットができたとしても、はたして量産で同じ特性が実現できるのか、それも考慮しなければなりません。

結構根気のいる作業で、納期の関係で時間も限られているため苦痛になり、これを生涯続けていく自信はありませんでした。機器の開発・設計の仕事をされている方には本当に頭が下がります。

 

bookmark_border[14] 固定無線電話システム

これも80年代半ばのかなり古い話になってしまいますが、アフリカのスーダンに無線電話システムを導入するプロジェクトに参加する機会を得ました。日本からの無償援助です。

首都のハルツームからナイル川に沿って南に150Kmほど下ったところに、ワドメダニという小さな町があります。そのそばの「ゲジラ地区」という、昔イギリスが灌漑システムを構築し綿花の生産を推進した広大な土地に無線電話網を引くというプロジェクトです。

自動車電話と違い電話機自体は移動しませんので、通話を隣の無線基地局に渡す「ハンドオフ(ハンドオーバー)」や交換機同士の切替「ローミング」という仕組みが不要であり、それに端末側には八木などの指向性アンテナが使え、山やビルが無いためサービスエリア推定が容易なことからシステム設計は比較的楽です。

ちなみに、通常の電話回線であれば無線ではなく有線で良さそうですが、広大な土地に電話線を引くコスト、ケーブルの盗難、メンテナンス等を考慮して無線になったようです。ただし問題は電源です。

電話機を設置する場所は、普通の家や事務所などでなく農業小屋のような簡素で電気が来ていないところもあります。有線電話であれば端末側は電源は必要ありませんが、無線電話ではそうはいきません。

そこで、端末側のアンテナポールに小型のソーラーパネルを付けバッテリー駆動させることにしました。ソーラーパネルの周りには何本か針金を立て、鳥が寄ってこないようにしています。

すでに35年ほど経っており、今現地はどうなっているのか・・・知りたいような知りたくないような気持ちです。おそらく携帯電話システムが構築され、現地の方は普通にスマホを使っているのでしょう。